2023年9月13日
【Interview#02】日本の未来を旅する〜人口300人以下の漁村で暮らす!?〜 「旅する学校」が提供する、三重県二木島での越境プログラム

山藤旅聞さん

 

「Interview#02」にご登場いただくのは、「旅する学校」山藤旅聞さん。新渡戸文化中学校・高等学校の副校長先生でもある山藤さんは、2022年に、地域伴走型教育旅行事業の企画・実施や探究学習などの教育支援などを行う「旅する学校」を一般財団法人として立ち上げました(現在は、定款変更をしており、校舎のあるハードの学校という固定概念を脱出し、ソフトの学校をつくる活動に注力中です)。

 

みらたびとして最初に提供するプログラムの舞台となるのは、「旅する学校」の本拠地でもある、三重県二木島です。二木島は、人口300人以下の漁村で、少子化問題をとっくに飛びこえ、地域の小中学校はすでに休校している超高齢化地域。でも、ここは日本の未来。人口減少を迎えている日本では、近い将来、多くの地域がこのような未来へ・・・しかし、ここには、美しい自然、海の恵みとともにある暮らし、地元の方々の温かさなどホンモノ体験であふれています。持続可能な未来や地域づくりを考えるにはもってこいの場所であり、未来の学校なのではないでしょうか。具体的な活動としては、二木島の海で漁を生業としている人と定置網漁業にいき、市場ではたらく人の仕事をみて、自分で獲ってきた魚を自分でさばいて食べる。一次産業の源流から口に入るまでの流れを自分自身で実際にやり、「食と環境」を体感しながら学びを深める旅となります。

 

三重県二木島

参加者募集中!

応募はこちらから↓

「自然とあそぶ!一次産業(漁業)のリアルに触れる!環境と食を通じて自分らしい生き方を学ぶ2泊3日の旅」

 

持ち物は米3合とお味噌!? 暮らしの原点を考え直す。安全な暮らしとは。今ある当たり前は本当に幸せなのか?を考える旅・・・二木島のプログラムは、いったいどんなものなのでしょうか?山藤さんにお話を伺いました。

 

 

 

-最初に、なぜ「旅する学校」を立ち上げたのかから、教えてください。

 

 

教育の現場にいて、持続可能な社会の未来の担い手を育てるってどういうことなんだろう、これからの未来を生きていく子どもたちに考えてもらいたいことはなんだろうと、ずっと自問自答してきました。

 

まずは、学校を取り巻く既存の価値観の外に出ていく必要があると思いました。そして、持続可能な社会とはどんな社会なのだろうと考えた先に行きついたのは、衣食住が自立した社会でした。日本は自然が豊かで、衣食住にまつわる文化や技術が、今ならまだぎりぎり地域に残っている。そこには、既存の価値観にとらわれずに衣食住に関連する仕事に尽力されている大人がいて、そこに様々なセクターの方が集まってくると、そこでイノベーションが生まれる。学校という箱を飛びだして、子どもたちと教育者が、そういった地域に入って、一緒に見て、考えていくことが必要だと思ったんです。

 

「旅する学校」は、設立当初は、主に修学旅行の在り方を変えていくことを目指していましたが、1年ちょっと経った今は、学校のない地域に、学校という”箱”にこだわらず、学べる場所をつくるという方向にシフトしています。具体的には、広域通信制の学校と連携し、通信制で単位習得を可能にしながら、いろいろな地域で暮らすように学ぶ教育デザイン具体化し、このノウハウをどの地域の生徒でも参加できるしくみを生み出していくのが「旅する学校」で目指していて、実現に向けめどがたってきたところです(並行して、新渡戸文化学園でも一条校としてこのような学びを実現するモデルもデザイン中です)。

 

もちろん、みらたびのような地域への入り口となるプログラムも、新渡戸の生徒だけではなく、中高生から大人まで、いろいろな方に引き続き提供していきたいと考えています。

 

 

-二木島との出会いは?

 

偶然、前職で勤務していた都立高校の卒業生というご縁で、二木島で漁業の6次産業化に取り組まれている、五月女圭一さん(株式会社ゲイト)との出会いから始まりました。

 

漁業は、たくさん魚が獲れたら市場で換金できて売上になりますよね。しかし、現実には水揚げされても市場では売れない「未流通魚」というものがあるのです。五月女さんは、そこに価値をつけて、独自の販売ルートを生み出し、新たな流通を生み出しています。結果、「未流通魚」なんていうものはないという世界を作り出すことで、既存の概念を打ち破りました

 

また漁に出ても魚が獲れなかったら売上としての価値は0ですが、他のセクターとかけあわせることで価値をつくりだせる。例えば、私たちのような教育というセクターとかけあわせると、生徒たちが漁に出て魚が取れなかったことも、教育的には価値があるので、0にならないんです。

 

未来志向で漁業に取り組まれている五月女さんは、一言で言うとこれまでに出会ったことのない方でしたが、未来型の教育にも関心を持って取り組んでくださる。二木島でご一緒させていただいたことで、私たちがやりたいことがプログラムとして初めて具体化できたんです。

 

衣食住の源流というと、漁業の他に、もちろん農業や林業もありますよね。どれも、人がどれだけ手を入れるか・入れられるかが焦点となってくると思いますが、漁業というフィールドの魅力は、海の水界生態系に対する圧倒的な人の手の及ばなさかなと思っています。植物プランクトン生態系の上に魚の生態系があるといった、陸と海の構造的な違いも、五月女さんに教えていただきました。

 

 

-今回はどんなプログラムになるのでしょうか?

 

まず、人間が絶対に作れないリアス式海岸という圧倒的な大自然の景観、それに向き合って人間が作り出した定置網という文化と技術を感じてほしいです。

 

希望者は朝、漁師さんと一緒に、漁に出て魚をとり、戻ってきて魚を選別し、市場で魚がどのように売られていくのか、普段スーパーで見る魚の源流を体感してもらいます。そして、食事は、完全自炊。「未流通魚」を自分たちでさばいて食べてもらいます。この魚の味は、ここでしか食べることができない美味!!!現地でしかできない価値を楽しんでもらいたいです。

 

定置網漁業

 

選別

 

-なるほど、持ち物に米3合と書かれていた理由がわかりました(笑)

 

プログラムに参加するとなると、子どもたちは、すごい経験ができる、たくさん教えてもらえるんだろうと受け身になってしまう気がして、主体的なマインドを持ってもらうには、まず自炊かなと。結果的に、子どもたちにとっても、主体的なマインドが入っている方が、学びの効果も高まりますので。

 

ちなみに、魚をさばくのを現地で初めてやると時間がもったいないので、事前学習で、朝どれ魚を参加者の自宅に送って、さばく練習をオンラインでやりたいと思っています。その日獲れた魚なので(自然が相手なので)、びっくりするくらいすごい平べったい魚とかが送られてくることもあります(笑)

 

自炊

 

ちなみに、プログラムで獲れた魚は自分でさばいてお土産として持って帰ってもらおうと思っています。「何この平べったい魚は・・?」というところから、食卓を囲んでもらって、感じたことや考えたこと、これまでの自分当たり前や、価値観が揺さぶられた瞬間など、子どもから保護者の方に話してほしい。そういう意味で、大人である保護者の方にもお子さんの体験を届けるというところまでやりたい。

 

 

-お話のなかに、大人というキーワードがよく出てきますね。地域みらい旅で実現したいことは?

 

これまでフィールドワークをやってきて、自分の中で強い確信になってきた考えがあるんです。子どもたちだけが対象の場合、教育的観点からも、ワクワクや楽しさ、希望を感じてもらうというところまででもいいのではないかと。。地方創生や超高齢化社会、少子化で学校が無くなるなどのいわゆる社会課題の話は、高校生にはしなくていいかなと最近は考えています。

 

社会課題については、大人が作った問題だから、大人が考えなければいけないこと。今の社会を作った世代の大人たちが今の現状を見て、感じ、真剣にこれからの社会を考えていくことが大切なのではないかと。子どもたちには大人が考えている姿を背中で見せるだけで十分。そのような背中を見てもらう中で、子どもたちに「こういう社会だけど、あなたたちはこれからどうしたい」と問いかけたい。みらたびでは、そのように子どもも大人も一緒に混ざって議論するような場を作っていきたいと思っています。

 

 

-最後に、参加を検討されている方にメッセージをお願いします。

 

変わりたいと思っている人はぜひ来て欲しい。また、日々の生活に違和感を感じたり、大人から言われることに違和感を感じたりしている人にもオススメです。ただ、お魚が全く食べられないという人はつらいかもしれません(笑)

 

大人の皆さんにも、何か違和感を感じている人に参加してもらえると嬉しいです。教育関係者ももちろん大歓迎です。正直、このツアーは大人を対象にデザインしていますので!!!

 

私の印象に残っている旅といえば、ブータン。自分が考えていた教育の当たり前を全て壊された旅でした。子どもたちがものすごく目をキラキラさせて勉強するんです。100人くらいに「なぜそんなに勉強するの?」と聞くと、みんな「国のためだ」と言うんですね。その後ASEANの国もいくつかまわりましたが同じでした。当時、進学校に勤務していて、同じ質問をしたら「大学受験のため」と多くの生徒から返ってくるだろうなと思い、そこから教育活動を変えていきました。このままでは、ASEANの諸国と一緒に活動をする際、日本の生徒たちが置いていかれてしまうと思いました。大人の皆さん、教育関係者とは、ぜひそんな話もしていきたいです。

 

 

 

山藤さんは、「まだまだプログラムは0→1の段階です」とおっしゃるくらい、世界と日本の各地をまわって出会った二木島というフィールドに可能性を感じているとのこと。「旅する学校」のプログラムはこれからもどんどん進化していくことは間違いないので、初期のこのタイミングから参加する醍醐味は大きそうです。参加応募は9/20までです!

 

応募はこちらから↓

「自然とあそぶ!一次産業(漁業)のリアルに触れる!環境と食を通じて自分らしい生き方を学ぶ2泊3日の旅」

 

(インタビュー・執筆 平尾久美子)

 

「たくさんの人のみらいにつながる、
豊かな旅を。」
-みらたびを運営する人たち-


みらたびの運営主体である、地域・教育魅力化プラットフォームは、「意志ある若者にあふれる持続可能な地域・社会をつくる」をビジョンに掲げ、高校3年間の「地域みらい留学」や高校2年生の1年間の「地域みらい留学365」も運営しています。