2023年12月7日
【Interview#04】あえての冬!まだ見ぬ奄美に触れ、五感でSDGsを考える。「ゼログラビティ」が提供する鹿児島県奄美市での越境プログラム
河本雄太さん

河本雄太さん

 

「Interview#04」にご登場いただくのは、一般般社団法人ゼログラヴィティ(→)の河本雄太さん。障がい者と健常者が共にマリンアクティビティを楽しめる奄美大島の瀬戸内町にある「ゼログラヴィティ」、ダイビングウェブメディア「ocean+α’(→)」(オーシャナ )を運営し、海を資源とする地域の課題解決にチャレンジされています。

 

地域みらい旅にご提供いただくプログラムは、2024年1月28日〜1月21日に実施する「島の自然であそぼう!島に残る歴史にふれよう!冬でも魅力的な島を満喫する3泊4日の旅」です。奄美大島といえば、夏、真っ青な空、真っ青な海がまずイメージされると思いますが、冬は冬で、表情の違うたくさんの「青」があふれているらしい・・・。今回は、そんな奄美の冬に広がる多様な青を通して、まだ見ぬ奄美に触れ、五感でSDGsを考えてもらおうと企画されました。

 

お申し込みはこちら!募集は12月13日(水)までです。

島の自然であそぼう!島に残る歴史にふれよう!冬でも魅力的な島を満喫する3泊4日の旅(→)

 

河本さんに案内してもらって奄美大島の魅力にどはまりし、瀬戸内町だけにもう10回以上は通っているという、一般社団法人シンク・ジ・アース(→)の上田壮一さんにもご同席いただき、お話をお伺いしました。

 

-奄美大島との出会いは?

 

河本さん:運営しているメディア「ocean+α」に、奄美大島に日本で初めて、世界でも珍しい障害者のためのマリンアクティビティ施設があるので、取材してほしいと依頼をもらったのが最初でした。奄美大島と聞いて、あれ沖縄だったっけと、私自身、位置関係もわからないくらいで、まだ世界遺産でもなく、LCCも飛んでいませんでした。

 

当時は、ダイビングのインストラクターを長年やってきて、楽しさを伝える人の価値を上げていきたいというのがモチベーションの中心だったので、アクティビティを提供するだけでなく、情報発信や現場以外のフィールドに出て行くことに力を入れていました。国連環境計画日本協会(日本UNEP協会)の事務局のお手伝いをするなかで、SDGsに触れ、現場サイドのアクティビストとしてできることがたくさんありそうだなと考えていたころでしたね。

 

 

-世界中の海をご存じの河本さんから見た、奄美大島とその海の魅力は?

 

河本さん:私たちの時代、20年くらい前は、Cカードをとったというと、グアムやサイパンハワイなど、大体海外の海でしたが、私の最初のダイビングは和歌山の白浜だったんです。日本でもいい場所があるのにとずっと思っていましたが、奄美大島に出会って、こんなところがあるのに、なんでバリやパラオに行くの?と、その思いが爆発したというのはありますね。SDGsでも地域振興が大事、そのなかで観光は大きな柱なのに、なんでもっと注目されないのかなと。

 

アクティビティを提供する私たちとしては、ソフトには自信があったけど、ハードを整える体力はなかったんです。取材は取材で終わったんですが、1年後くらいに施設の運営に入ってもらえないかと声をかけてもらって、2016年から引き継ぐことになりました。沖縄もオーバーツーリズムも問題になっていて、次の場所が必要という流れもあったと思います。

 

 

-運営を始めていかがでしたか?

 

河本さん:(障がいなどで)海遊びをしたこともない、旅もしたこともない人が島にやってくる、その家族もくる、リピーターになる、そして一般のお客さんも増えてくる・・・これまで来ることができなかった人たちが動き出すことで、新たな人の流れが生まれ、雇用も増え、地域が元気になっていくというのを実感しました。

 

最初は「黄色い壁の変な施設ができた」と遠巻きに見ていた地域の方々も、テレビに取り上げられたあたりから、島の外の人、例えば東京に働きに出ているお子さんから「面白い施設ができたんでしょ」と言われ、「気にはなってたけど見に行けなかった、見せてもらっていい?」と声をかけてくれるように。それから、地域の方々との交流が始まりました。地域外の人からの評価をきっかけに、地域内の人は自信を持っていくんですよね。町役場の人にも、町の振興を一緒にやっていきましょうと声をかけていただくようになりました。

 

 

-さて今回の旅のプログラム、推しポイントは?

 

河本さん:もう写真をいろいろ見てもらうのは早いですね。

大島海峡のthe絶景

大島海峡のthe絶景:瀬戸内町と加計呂麻島に挟まれた穏やかな海、高い透明度で有名

 

ジュラシックビーチ・嘉徳海岸

ジュラシックビーチ・嘉徳海岸:何もしなくてもいいのですが、サーフィンやシュノーケルも

 

ホノホシ海岸で朝日

ホノホシ海岸で朝日:朝日:荒波に削られた丸石が敷き詰められています

 

満点の星空

満点の星空:流れ星は見られない方がレア、、です

 

1月であればホエールウォッチングも含め、私たちとして、いろいろなプログラムやフィールドをもちろん用意はしていますが、じゃあ何をやろう・何ができるかは、その時次第がいいと思っています。

 

例えば、先日実施したプログラムでは、西古見という集落で、パッションフルーツの苗木を植えました。旦那さんが亡くなって、一人でやっている奥さんが「苗を植えるのが大変なのよね」というので、「高校生が来るから植えてもらいましょうか?」と提案したら、「あらいいの」と。高校生たちにも「パッションフルーツ送ってもらえるぞ」と誘ったら、喜んでやってくれました。来年は土起こしから、一緒にやりましょうと言う話になっています。

 

また、島の文化として、大人同士であれば、最後は飲み屋に行って歌うとなるのですが、高校生相手にそれはできないなと思っていたところ、地域の仲良くしていただいている役場の方に、ガレージ((大人も憧れる秘密基地!)での宴会に招待していただけることに。高校生と一緒に手ぶらでは行けないよねと、その日上がった魚をわけてもらって、さばいて、お刺身にして、献上しました(笑)。歌と言っても島唄でもないんです。「お前たち何が歌えるんだ?尾崎か」となり、楽器を持ち出し、高校生も一緒に演奏すると言う展開に。

 

こんな嬉しいハプニングがあるのがいいですよね。

 

 

-最高です。プログラムを通して伝えたいこと、感じて欲しいことは?

 

河本さん:SDGsは環境問題と直結しすぎてしまっていて・・・。例えば少し前であればマイクロプラ、最近だとブルーカーボンについて話を聞くことになりますよね。社会課題として共感は得られるが、共体験まで持っていかないと、モチベーションが上がらない、続かない。

 

楽しいから入って、共体験し、モチベーションを上げる。このモチベーションをどう上げるのか、上がっている時に何を伝えるのかを考えるのが、私の仕事だと思っています。

 

ゴミ拾いアート

ゴミ拾いアート

 

例えば、ゴミ拾いってそれだけではモチベーションは上がらないんですが、最初に絵を描いてもらって、その絵を表現する色を拾いに行く。色を探すと、自然とシーグラスを多く拾ってくることになるんですが、このシーグラスというのがサーフィンをするのに危険なんだよと伝えるんです。

 

自然や海というものにベースはポジティブなんだけど、何かの理由で海に入ったことはない、海に入るのが怖い、自信がないという人に向けて、楽しみをきっかけに一歩踏み出せるステップを作ることを大事にしています。シュノーケリングに浮き輪を持ってくるような子も、次の日にはサーフボードに立てるようにもなるんです。

 

 

-ご自身の一歩踏み出す、越境するという体験はこれまでにありましたか?

 

いっぱいあるんですが・・・。SDGsの流れで、上田さんと出会って、奄美大島に半分くらいいる生活へと踏み出したこともそうかもしれません。日本UNEP協会にいた時に、海の課題について、アクティビストとして体験はしているので理解はしているが、言葉として説明ができないというもどかしさがある一方、研究者や企業の理論的・学術的な説明だけでも十分に伝わらないんじゃないかと気づきました。自分は、東京・霞ヶ関にいるより、ここで得た知見や人脈を持って、アクティビストとして現場にいた方が価値が出せると思って、東京と奄美の二拠点生活を始めたんです。

 

 

-上田さん、いかがでしょう?

 

上田さん:出会ったころは、河本さんはもう奄美の人っていう印象でしたけど(笑)。奄美大島にはそれまで行ったことがなく、行ってみたいとは思っていたけど、実際にこんなに通うようになったのは、河本さんの魅力が大きかったです。もう今年だけで、3回は行っていますね。それも瀬戸内町だけという、かなりレアな人です。

 

もともと水泳をやっていたし、シャチの海中のライブ中継などをやったこともあったんですが、奄美に通うなかで、今度海についての本を作ることにもなったし、大学の授業でも海を取り上げるようになりました。河本さんとの出会い、奄美との出会いで、自分の人生に海が戻ってきた感じですね。

 

越境ということで言うと、まず、最初に1回行ってみることが大事。1回行ってみると、知っている場所になり、また行く場所になることで、いろいろなことが生まれてくる。越境したことで自分が広がる、またそこから何本もの橋がかかって、どんどん広がっていくという感じでしょうか。

 

河本さん:上田さんの言う通りですね。私も、半分東京、半分奄美になった時は、二拠点と言っていたんですが、今その半分の半分で、屋久島や大阪などにも足を伸ばすことになり、多拠点になってきています。自分のなかで奄美の存在がなくなることはないですが、こんな場所にこの先まだまだいくつ出会えるんでしょうね。

 

 

-1歩踏み出すとどんどん広がっていく。地域みらい旅は、たくさんの人のその最初の一歩になりたいと思っています!

 

河本さん:私が奄美に引き込んだ人によく言われるのですが、東京で奄美に行ったよという話が出ても、普通の旅行で行った人とは話が合わない、河本くんと旅した人としか話が合わないんだよねとよく言われます(笑)。私もガイドブックに載っているようなことももちろんやるんですけど、それだけじゃない、そういうことじゃないんだろうなと。

 

上田さん:ディープ奄美、奥奄美なんですよね。

 

ゼログラビティ前に広がる青い海

ゼログラビティ前に広がる青い海

 

 

みなさん、一歩目は大事です。一歩踏み出すには、ぜひこんな大人たちと一緒がいいのではないでしょうか?
募集は12月13日(水)までです!

島の自然であそぼう!島に残る歴史にふれよう!冬でも魅力的な島を満喫する3泊4日の旅(→)

 

(インタビュー・執筆 平尾久美子)

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豊かな旅を。」
-みらたびを運営する人たち-


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