2023年8月16日
【Interview#01】“旅”から世界を広げるきっかけを。今夏スタートする「みらたび」の魅力とは

何かを始めたい。けれど、何かわからない。
そう感じている中高生は、案外多いのではないでしょうか。

 

2023年8月17日、一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム(以下、CPF)は、中高生が今いる場所から少し離れ、新しい世界に出会う「地域みらい旅(以下、みらたび)」をリリースしました。日本全国を舞台に、CPFとたくさんの学びの場を第一線でつくってきた実践家がパートナーシップを組んで、みらいにつながる旅として、多様なプログラムを提案していきます。

 

サービスの立ち上げにあたり、なぜ今、「みらたび」を始めるのか。そして、どのような思いが込められているのか。CPF専務理事の尾田洋平と事業責任者の出濱義人に、話を聞きました。

 

 

 

一歩踏み出す、をもっと気軽に

 

 

—— 「みらたび」をスタートすることになった経緯は?

 


専務理事 尾田洋平

 

 

尾田:地域、みらい、留学、旅とかの言葉ってそれぞれでは理解できても、地域みらい留学、地域みらい旅という単語になった時に、よくわからないけど、なんかすごい面白そうじゃないですか。だから、やりたいと思った。それが大前提なのですが、背景も少しお話ししますね。

 

CPFでは、これまで「地域みらい留学」を主軸に、都市部の中高生が地域の特色ある高校に3年間の進学や1年間の留学するためのサポートを行ってきました。都市部の生徒にとっては、地域の濃密なコミュニティの中で手触り感のある社会を体験することにより、意志が育まれる。地域の生徒にとっては、都市部の生徒が入ってくることでこれまでの固定化したコミュニティや価値観に変化が生まれ、多様性が担保され、意志が育まれる。高校の存続は地方の存続に欠かせないので、地方創生に繋がる取り組みでもあります。

 

一方で、留学期間としては、1年間か3年間と長いものしかないので、どうしても参加できる生徒の人数は限られてしまう。地域への越境を当たり前の選択肢にするには、もう少しハードルを下げて、気軽な気持ちで踏み出せる、数日間〜1週間の地域への越境体験を用意したいと思って、今回の「みらたび」の企画がスタートしました。

 

 

 

—— 地域に越境することの価値とは?

 

尾田:私自身は、偏差値を高める教育を受けてきて、与えられたルールの中で100点を取れる人が偉いとずっと思ってきました。モノサシは1つだった。それが、新卒で入社した会社での体験を通して大きく価値観が変わったんです。私にとってまさにそれが越境体験でした。モノサシは1つじゃなかった。人生って、すごく自由で楽しい。与えられたルールの中で生きるのではなく、自分でルールを見つけていくことが人生なんだと気づきました。自分で何かを創り出したり、誰かに支えられながら一歩を踏み出してみる、越境経験は、社会人になる前の段階から必要なのではないかなと思っています。

 

そして、地域には、最初の一歩を踏みだすのに適した環境があると思っています。私は、島根県浜田市の出身で、父を早くに亡くし、母子家庭で育ちました。父は生前、事業を営んでいたので、家には人の出入りが多く、家族以外の人とも一緒に食事をするような環境でした。父が亡くなってからも、地域の方たちに目をかけてもらい、良し悪しはあるのでしょうが、お節介な環境で育ててもらったことをありがたいと思っています。地域には、包摂されているという安心感が得られる環境がまだあるんです。

 

社会が流動的になっている今、越境することの価値はより強く感じるようになりました。複数拠点だったり副業だったりと、大人には選択肢が出てきていますよね。であればなおさら、中高生も自分の行きたい地域に、挑戦したいテーマで、滞在時間も自分で決めていく、そんな選択肢があってもいいのではないか。その思いが、今回の企画に繋がっています。

 

 

 

体験から感じ、言葉にして、深めていく

 

 

—— 「みらたび」のコンセプトは?

 


みらたび事業責任者 出濱義人

 

 

出濱:「みらたび」は、新しい未来への一歩に繋がるようなきっかけづくりだと思っています。コンセプトは、「旅するようにまなぶ」。

 

「みらたび」の旅先では、魅力的な大人に出会ったり、その地域ならではの体験をしたりすることができます。そのときに、「あぁ、こういう生き方をしている大人がいるんだ」「自分もこれをやってみたいな」と感じるかもしれません。まずは、その感じるということ、一人ひとりの感性や五感による、あたまだけではなく、からだに残る学びを大切にしたい。

 

そのうえで、出会いや体験を通して感じたことを、仲間と共有し、対話しながら深めていくという時間が重要だと考えています。自分と他者が見ている世界の違いに気づくかもしれないし、自分自身の新しい一面を発見するかもしれない。

 

頭だけで知識をインプットするのではなく、旅の楽しさを感じつつ、対話を経て、学びにも繋がっていくような体験をイメージしています。

 

 

 

—— 具体的には?

 

出濱:CPFがこの秋提供するのは、例えば、徳島県の南部にある海陽町で実施する高校生向けの3泊4日のプログラムで、コンセプトは「”水”を巡る旅」。水にまつわる循環の物語を体感しながら、自然の恵みを得て多様なはたらき方や生き方をしている人たちと出会う旅のプログラムです。

 

 

海陽町は、雄大な太平洋と豊かな森や山に囲まれた自然豊かな場所です。この町には、山や海の恵みを大切にしてきた文化や伝統を継承しながら新しい考え方を取り入れて活動する方や、自然や水の豊かさにテクノロジーを掛け合わせ「世界一おもしろい水産業へ」を掲げてカキ養殖のスマート漁業に挑戦する方などユニークな方々がいます。

 

今回は、例えば、海の豊かさを目の前に感じながら、牡蠣養殖を通して“海”について探究していきます。その際に、海の環境について探究していくと、海だけでは十分それを語ることができなくなり、“山”の話に行き着くんですね。そして、この土地で暮らしてきた昔の人たちは、そのことを理解していて、山の中に湧き出る源流に神社を立てて昔からまつっているんです。

 

この自然や人の営みの一連の流れを、実際に自分の目で見て触れて考えてみる。このように、水を中心にフィールドワークして探究していくことで、いろんなことのつながりや循環がみえてくる。それを体感しながら学ぶといったものになります。牡蠣の養殖から始まり、深掘りしていくなかで、水の循環のストーリーや自然との関わり合いを体感できるわけです。

 

また、そのような豊かな自然を感じる竹あかりや藍染め、ジビエなど”山”をテーマにした選択制の体験やアクティビティも予定していて、そこではたらいている人と一緒に作業したり対話する時間があります

 

”海”や”山”で体感したことをもとに対話し、海陽町のなりわいを考えるとともに、「自分たちはこれから何ができるのか?どう生きていくのか?」など、自分自身や未来について考える、そんな流れのプログラムになっています。

 

 

 

作り込みすぎない。ホンモノの体験であること

 

 

—— 「みらたび」のプログラムで、1番大事にしていることは?

 

出濱:プログラムはもちろんあらかじめ用意しているのですが、何が起こるかわからないような余白も残したいと思っています。aをした後はbをして、これをやったらzになる、みたいに設計されたプログラムというより、参加者の感性を大切にしつつ進めたいですね。

 

大きな流れはプログラムに沿っていくけれど、「もう少し海にいたい」という気持ちが強くなったら、予定を変更して海にいるとかは全然ありだと思います。”イキイキとした気づき “”イキイキとした発見”を大切にしたい。

 

尾田:そういう意味では、“ホンモノの体験””ホンモノとの出会い”であることも大切にしたいですね。例えば、事前に地引き網にたくさんの魚を入れておいて、魚が取れる体験を演出することは、やりたくないと思っています。

 

実際に漁師と同じように朝3時くらいに沖に出て、魚を取る。そこでは魚が取れるかもしれないし、取れないかもしれません。取れたとしても、大きさによっては漁港で売れないかもしれなくて、そうなると自分たちで食べることになるかもしれません。

 

そんな風に、地域で起こりえる本物の体験を通して、「自分がどう感じたのか?」「どこに心が動いたのか?」、もしくは「どこに心が動かなかったのか?」を感じられるといいんじゃないかなと思っています。

 

 

 

旅には、新しい世界との出会いがある

 

 

—— 今回”留学”ではなくあえて”旅”をコンセプトに掲げていますが、あなたにとって”旅”とは?

 

出濱:旅って予想外のことがたくさん起こると思うんです。それを許容しながら時間を過ごす中で、想像していなかったような面白さや新たな自分を見つけることがある。「案外、自分はビビリだな」とか「案外できたぞ」とか。

 

尾田:私は普段月の半分くらいは出張に行っているのですが、予想外のことばかりなのでいつも旅をしている感覚です(笑)キーワードとしては、「偶発性」とも言えるのかなと。

 

出張先では偶発性まみれですよ。初めての地域は空気感が違うし、初めての出会いに溢れています。出会ったことがないものに出会って感動して、それを誰かに伝えたくなる。また同じ場所に行きたくなったり、新しいことを始めたくなったりすることもあるんですよね。

 

出濱:たしかに、旅には感動する体験がありますよね。心が動く感じ。日常の世界から一歩外に出て非日常を体験すると、ドキドキしたりワクワクしたりする。

 

日常の中にも非日常な体験はあるけれど、どうしても心が動く体験は少なくなります。旅は、日常のルーティンから解き放ってくれるようなものかもしれませんね。

 

 

 

—— 最後に、「みらたび」に興味を持っている中高生へメッセージを。

 

尾田:中学生や高校生の中には、もしかしたら、1つのモノサシで評価される世界でずっと戦っている人がいるかもしれません。実際に私自身もそうだったけれど、社会に出たら、モノサシは1つではないことを知りました。

 

なので中高生の間に、今いる世界から一歩外に出てみる体験はすごく重要だと思っています。自分が行きたいところに行ったり、会いたい人に会いに行ったりしてほしい。

 

「みらたび」には、学校生活にモヤモヤしたり変わりたいと思ったりしているけど、踏み出し方がわからない子たちに来てほしいなと思っています。

 

出濱:そうですね。まさに何かのきっかけを求めている子たちにぜひ来てほしいと思います。また、そこまで明確な目的意識を持って参加しなければいけないものでもないと思っています。「楽しそうだな、行きたいな」と思った人は、もう全員来たらいい(笑)

 

参加してみたら「すごく楽しかった!」「食べ物が美味しかった!」「面白い人と出会えた!」とか、そんな体験をしてもらえたらいいと思っています。それを持ち帰ったときに、新たな一歩を踏み出しやすくなっているといいなと思っています。

 

 

 

(インタビュー・執筆 建石尚子)

 

 

 

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「たくさんの人のみらいにつながる、
豊かな旅を。」
-みらたびを運営する人たち-


みらたびの運営主体である、地域・教育魅力化プラットフォームは、「意志ある若者にあふれる持続可能な地域・社会をつくる」をビジョンに掲げ、高校3年間の「地域みらい留学」や高校2年生の1年間の「地域みらい留学365」も運営しています。